心理学

【メタ認知とは】意味やトレーニング法をわかりやすく解説

メタ認知とは

メタ認知(Metacognition)とは、自分や他の人を含む認知についての認知のことです。

定義的に説明すると難しいと感じるかもしれませんが、あなたはこのメタ認知を日常的に行っています。そのため、自分についてより理解するという意味でも、メタ認知は重要です。

そこで、この記事では、

  • メタ認知の意味・トレーニング
  • メタ認知の心理学的実験

をそれぞれ解説していきます。

好きな箇所から読み進めてください。

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1章:メタ認知とは

1章では、メタ認知の全体像を提示します。メタ認知の心理学的実験に関心のある方は2章から読んでみてください。

このサイトでは複数の文献を参照して、記事を執筆しています。参照・引用箇所は注1ここに参照情報を入れますを入れていますので、クリックして参考にしてください。

1-1:メタ認知の意味

認知についての認知とはどういう意味なのでしょうか?このことを詳しく説明するためには、まずは認知とは何かという話をする必要があります。

認知とは、

外界の情報を認識したり、それについて考えたりする機能全般のこと

を意味しています。

これには、感覚や知覚、注意や記憶といった基本的なものから、問題解決や推論、判断や意思決定といった高次な思考にまつわるものがすべて含まれています。認知心理学の教科書を持っている方は目次を見てみると、この「認知」という言葉の持つ範囲の広さが分かると思います。

話が少しそれましたが、つまりメタ認知とは、これらの自分の行う認知活動を客観的にとらえて、どういうモノかを認識し、それについて考えたりする機能全般のことを意味しています。

このようなことを書くと、難しいことを言い始めたぞと思うかもしれません。しかし、私たちはこのメタ認知を日常的に行っています。たとえば、皆さんの目の前に算数のテストがある場面を想像してみてください。

  • どうやらそのテストは小学3年生レベルの問題のようです。さて、あなたは今からこれを行うとしましょう。その時、何点くらいとれると思いますか?
  • 大昔のことで忘れているかもしれないと考えて、50点でしょうか?それともさすがに小学3年生の問題は解けると考えて、100点でしょうか?それとも、人間ケアレスミスをするもんだと考えて、95点でしょうか?
  • なんにせよ、ある程度の自分のとる点数を予測できたのではないでしょうか?しかも、当てずっぽうではなく、自分の能力や、人間の記憶や失敗についての性質(つまり、認知についての性質)を加味した上で、この数値を計算したのではないでしょうか。これこそがメタ認知です。



1-2: メタ認知的知識とメタ認知的活動

このようなメタ認知ですが、大きく分けて、メタ認知的知識とメタ認知的活動の2つの機能から構成されています2三宮真智子『メタ認知で学ぶ力を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法』(北大路書房)三宮真智子『メタ認知: 学習力を支える高次認知機能』(北大路書房)

1-2-1: メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、認知についての知識全般を指しています。三宮ら(2014)によるとFlavell(1987)は、メタ認知的知識について、以下の3つの観点でこれをとらえました。

  • 人間の認知特性に関するもの
  • 課題についてのもの
  • 方略についてのもの

これらについて理解するために、先ほどの算数のテストの得点を考える例を考えてみましょう。皆さんはどのような知識を利用して得点を予測したでしょうか?

まず、「人間はしばしばケアレスミスをするものだ」や「自分は算数が得意(苦手)だ」といった、自分自身の特性や他の人との関係といった知識を使ったのではないでしょうか。これらが、人間一般や自分や他人の認知の特性に関連した知識です。

また、認知特性についての知識と重複する部分もありますが、「一般的に自分の年齢くらいであれば小学3年生の問題くらいとけるはず」や「算数のテストは学年が上がるほど難しくなる」といった今自身が行っている課題についての知識が、課題に関連した知識にあたります。

方略についての知識は、少し複雑ですが、その目的を達成するためにはどのような方法を使用すればいいかという知識です。今までの例とは少し異なりますが、「算数のテストで高得点を撮るためには、見直しが必要だ」といった知識がそれにあたります。

これらのメタ認知的知識は、私たち自身の行動を監視したり、適切にコントロールするために非常に重要です。なぜなら、これらの知識を持っていないということは、自分の認知を監視したりコントロールしたりする基準がないということになるからです。

1-2-2: メタ認知的活動

次に、メタ認知的活動についてです。私たちは、日常生活の中で、「ちょっと待てよ」と自身の判断を内省し、自分の判断の間違いに気が付くことが出来ます。

そして、このような場面では、こういう方法を利用するとよいと考えて、自分の行動を変化させたりします。このような、自分の認知活動を監視したり、判断や行動をコントロールしたりすることを指してメタ認知的活動といいます。

三宮ら(2014)はこのメタ認知的活動を以下のように呼んで、認知活動の事前、遂行中、事後に分けて整理しています。

  • メタ認知的モニタリング・・・認知についての気づき、フィーリング、予想、点検、評価といった自身の認知活動を監視する機能
  • メタ認知コントロール・・・認知についての目標設定・計画・修正といった、自身の認知活動を制御する機能

ここでは、テストで目標の点数をとるために勉強をするという課題を解決する際の手続きを事前、遂行中、事後に分けて、それぞれの段階におけるモニタリングとコントロールの役割について整理したいと思います。

まず、事前段階です。

事前段階

  • メタ認知的モニタリングを使用して、現在の目標が達成可能なものかどうか、その達成にはどれくらいの労力がかかるかといったことを予測、評価する
  • また、メタ認知的コントロールを使用して、目標を設定し、どれくらいの時間をかけるかといった計画を立てて、方略を練る
  • 通常、これらのモニタリングとコントロールは相互作用している。たとえば、メタ認知的コントロールによって、100点をとるという目標設定と、一日24時間勉強するという計画を立てたとしても、モニタリングによって、困難度が高いと評価をされれば、またコントロールが働き、目標設定を見直すこととなる

次に、遂行段階です。

遂行段階

  • 遂行段階におけるモニタリングの役割は、課題の困難度を再評価したり、自身の課題達成の進捗と目標のズレを評価したり、自身の方略の点検を行うことが挙げられる
  • たとえば、「テスト勉強をやり始めたら思ったよりも範囲が広くて難しいぞ(困難度の評価)、これは全部暗記するのは厳しいな(方略の点検)、今のままでは目標の点数に到達できそうにないや(課題達成の進捗と目標のズレの認知)」といった活動はモニタリングによるものである

当然ですが、それに対して、コントロールは目標や計画の修正や方略の変更を行います。

具体的には、「10時間の勉強で、80点はとれなさそうなので15時間勉強しよう(目標や計画の変更)、そして、丸暗記できる量じゃないから全体の流れを抑えて、理解する勉強法に切り替えよう(方略の変更)」といった活動がコントロールにあたります。事前段階と同様に、これらはモニタリングとコントロールを行き来しながら行われます。

最後に事後段階です。

事後段階

  • 事後段階における、モニタリングの役割は課題の達成度の評価や成功や失敗の原因の分析である
  • たとえば、「15時間しっかり勉強出来たし、テストもよくできたぞ(課題の達成度の評価)」「テストが返ってきて85点だった、目標達成だ!暗記する勉強法から理解する勉強法に変えたおかげだけど、理解に努めすぎて細かい暗記がおろそかだったな(成功失敗原因の評価)」といったものがこれにあたる

また、コントロールの役割は、目標や計画を改めて決定したり、方略を選び直すことです。

例えば「今回は、85点だったから今度は100点を目指すぞ(目標の再設定)、そのためには普段からしっかり勉強することが大事だ(計画の再設定)、勉強法も理解だけじゃない細かい暗記を徹底しよう(方略の再選択)」といったものです。

基本的にこれらの3つの段階は、ある目標を達成するまで繰り返されます。テスト勉強をするという活動の中には、単語を覚えるや、数式を理解するといった活動が含まれていますが、このそれぞれについて、これらの3つの段階が想定されます。

つまり、私たちは課題の達成に向けて様々なレベルでメタ認知を行っているのです。



1-3: メタ認知のトレーニング

ここでは、メタ認知のトレーニングという観点で話を行います。直接的にメタ認知に関わる能力を鍛えることが出来るのかというのは現在も議論の対象になっています。

実際に、メタ認知促す学習支援システムにおいて、メタ認知を直接活性化させるというモノはほとんどないです。しかし、メタ認知によって行われる活動としての内省支援や自己説明(自分で自分に説明すること)支援や考えていることをノートなどの外の世界に出す外化支援といったものは存在します3平嶋宗「メタ認知の活性化支援」)(< 特集>「学習支援の新たな潮流-学習科学と工学の相互作用-」)『人工知能学会誌』21(1) 58-64頁

つまり、メタ認知そのものを強化するよりは、メタ認知に基づく活動を促すというのが現在の学習の分野における主眼となっているということです。 そこで以下ではメタ認知の活動を支援するにはどうすべきかについて説明します。

当たり前ですが、メタ認知を行ういやすくするためには自分の認知を認知しやすくすることが重要です。より詳細にはメタ認知的活動におけるコントロールやモニタリングを行いやすくすることが重要です。

まず、コントロールに対する支援についてです。メタ認知的コントロールの難しさは、その必要性を認識しにくいことにあります。うまくコントロールを行えないような場面では、自分では認知を修正する必要性に気づいていない場合がほとんどだからです。

そこで、このコントロールを促進する方法として代表的なものの1つに自己説明というものがあります。

自己説明という方法

  • 自分の認知活動や判断について、説明をするつもりで話してもらうというものである
  • これにより、自分が説明できないことや、誤りに気づきコントロールを働かせ安くなるといわれている

続いて、モニタリングに関する支援についてです。メタ認知的モニタリングの難しさは、認知が通常認識できるものではないということです。つまり、自分がどのように考えて行動や判断をしたかというのは意識して考えなければ見えてこないということです。

そこで、モニタリングの支援によく使用されるのは、外化支援です。つまり、認知プロセスを「見える化」してやるということです。

  • たとえば、学習支援の場でよく使用されるのは、学習の進捗の見える化である
  • 学校現場において、メタ認知を意識してその活動が行われているのかはわからないが、課題を達成したところにマークを打つといったものはモニタリングの支援につながっている
  • なぜなら、自身の出来ることが見える化されることで、自身の認知を振り返らなくても自分の状態を普通の認知のレベルで認識できるので、モニタリングが容易になるためである

どうでしょう?メタ認知の全体像を掴むことはできましたか?

1章のまとめ
  • メタ認知とは、自分や他の人を含む認知についての認知のことである
  • メタ認知は、大きく分けて、メタ認知的知識とメタ認知的活動の2つの機能から構成される
  • メタ認知そのものを強化するよりは、メタ認知に基づく活動を促すというのが現在の学習の分野における主眼となっている

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2章:メタ認知に関する心理学的な研究・実験

ここまでは、メタ認知の概略と促進支援に関して説明を行ってきました。以下では、メタ認知を行うための基盤となっている機能の1つである心とはどういうものかを理解しているかを確かめる実験を紹介したいと思います。

2-1:心の理論の実験とメタ認知

心の理論とは、心とはどういうものかに関して素朴に私たちが持っている理論のことです。これを持っていることにより、私たちは、他の人がある場面に置かれたらこのように考えるだろうといった、シミュレーションを行うことが出来ます。

反対に、心の理論を持っていなければ、イマココで考えていることがすべてであり、架空の状況に置かれたときにどのように感じるかをシミュレーションすることはできません。つまり、この心の理論を獲得していないということは、自分が他の状況だったらどう考えるかといった、メタ認知を行う上で非常に重要なことが出来ないことを意味しています。

いまから紹介するのはこの心の理論を獲得しているかどうかを確かめる、フリスらによるアン&サリー問題という実験です4Frith, U.(2003) Autism: Explaining the enigma Blackwell Publishing。この実験の対象者は、心の理論の獲得が未発達な子どもです。まず次のようなストーリーの人形劇を見せます。

「サリーはバスケットをもっています。アンは箱を持っています。サリーはビー玉を持っていました。サリーはビー玉を自分のバスケットの中に入れて散歩に出かけてしまいました。アンはこっそり、ビー玉を自分の箱に入れました。サリーは散歩から帰ってきました。サリーは、ビー玉で遊びたいと思いました。」

そして、続いて、「サリーはビー玉を取り出そうとしてどこを探すでしょう?」と聞きます。もし、心の理論が発達していれば迷うことはありません、サリーの視点に立って考えると、隠しているところは見ていないはずですから、もちろんバスケットを探すと考えられます。

しかし、実験の結果、心の理論が未発達な3歳程度の子どもは箱を探すと答えてしまうことが示されました。また、4歳以上の子どもはバスケットの中と正しく答えることが出来ました。この実験は、思考について考えるための基盤となる、心の理論が発達的に獲得されていくことを示すものです。

メタ認知の実験として、今回はアンとサリーの問題を取り上げましたが、これらはあくまで心の理論を取り出すための実験であることは誤解しないでいただきたいと思います。今回はあくまでもメタ認知の基盤となるような能力を取り出した例として紹介しました。

メタ認知の研究において、メタ認知をどのように取り出すかというのは現在も議論されている1つの問題となっています。そのため、メタ認知を取り出したという実験は私の知る限りでは今のところありません。

メタ認知を取り出すために有益な方法として、課題中の思考内容を発話させるというというものがありますが、これも思考を発話させることで、自然なメタ認知を測定できていないという批判もあります。このように、メタ認知をそのまま取り出すことは非常に難しく、その方法は現在も議論の対象となっているのです。

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3章:メタ認知について詳しく学べる本

メタ認知を理解することはできました?

メタ認知に少しでも関心をもった方のためにいくつか本を紹介します。

おすすめ書籍

オススメ度★★★ 三宮真智子『メタ認知で学ぶ力を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法』(北大路書房)

メタ認知がどのようなものかという概説から、様々な分野との関わりまで平易に説明されています。とくに、学習を促進するうえで重要な“メタ認知的知識”が、トピックごとにまとめられているので、テスト勉強を効率的に進めたい!といった人にもお勧めです。

オススメ度★★★ 三宮真智子『メタ認知: 学習力を支える高次認知機能』(北大路書房)

より専門的なメタ認知に関する書籍です。認知心理学的なメタ認知の解説というよりは教育心理学的内容を多く含みます。教育においてメタ認知がどのように活用されている(されようとしている)かに関心がある方におすすめです。

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まとめ

最後にこの記事の内容をまとめます。

この記事のまとめ
  • メタ認知とは、自分や他の人を含む認知についての認知のことである
  • メタ認知は、大きく分けて、メタ認知的知識とメタ認知的活動の2つの機能から構成される
  • メタ認知そのものを強化するよりは、メタ認知に基づく活動を促すというのが現在の学習の分野における主眼となっている

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